点滴を続けたまま入居し、家族に囲まれて|看多機の実践報告
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点滴を続けたまま入居し、
ご家族に囲まれて最期を迎えた85日間

看護小規模多機能型居宅介護における実践報告

看多機たいよう堺東(大阪府堺市堺区) / 公表 2026年9月2日

「点滴が必要な状態では、施設に戻れないと言われた」

「延命はしない。でも、水分だけは続けてほしい」

「最期はできるだけそばにいたい」

医療機関のソーシャルワーカーの方、ご家族から、こうしたご相談をいただくことがあります。

看多機たいよう堺東では、点滴による水分補給を毎日必要とする90歳代の方をお受けし、施設内で療養を続けていただきました。この記録は、そのうち最後の85日間を分析したものです。

85分析期間
281介護・看護記録(1日平均3.31件)
0救急搬送・入院

「点滴が続く方は、戻れない」という壁

B氏(仮称)は90歳代の女性です。認知症があり、ほぼ寝たきりの状態で、食事はペースト食を介助でお召し上がりでした。

もともと特別養護老人ホームにお住まいでしたが、尿路感染症で入院されました。感染そのものは治療で落ち着いたものの、その後も食欲が戻らず、口から摂れるエネルギー量は必要量に届きませんでした。最低限の尿量を保つために、1日500mLの点滴が欠かせない状態になっていたのです。

ここで壁が生じます。もとの特別養護老人ホームに戻るには「点滴を行わないこと」が条件でした。しかし点滴をやめれば、死期が早まる可能性があると医師から説明されていました。

ご家族が出された結論は、次のようなものでした。

  • 腕の血管から点滴ができる間は、点滴を続けてほしい
  • 血管が確保できなくなったら、そのときは点滴も不要
  • 鼻からの管や胃ろうといった栄養方法は行わない
  • 急変しても、人工呼吸や心臓マッサージなどの救命処置・延命治療は行わない
  • できるだけ頻繁に、本人に会いに行きたい

当施設は、この方針をそのまま引き継ぐことを前提に、B氏をお迎えしました。

85日間の記録

数字で見るケアの実際

分析期間85日
介護・看護記録の件数281件(1日平均3.31件)
関わった職員数23名
入浴の実施23日
施設内での点滴実施7日
医師の往診・指示のやりとり9日
救急搬送・入院0件

「熱が出たら、どうしますか」を先に決めておく

B氏には時折発熱がみられ、飲み込む力の低下から誤嚥性肺炎のリスクが高い状態でした。

そこで看護師は、実際に肺炎が起きる前に、ご家族へお尋ねしました。「誤嚥性肺炎になった場合、病院で治療を受けたいですか。それとも施設内で点滴と抗生剤の治療を行いますか」

ご家族のお答えは「ここで治療してください」でした。

その12日後、B氏は39.0℃の発熱を認めました。看護師はすぐに主治医へ情報通信機器で報告し、その日のうちに解熱剤の使用と点滴開始の指示を受けました。夜のうちに点滴を開始し、翌日には熱が下がりました。病院へ搬送することなく、施設内で治療を完結できたのです。

事前にご家族の意向を確認していたため、発熱したその日に「どうするか」を相談する必要がありませんでした。この時間の差が、対応の速さにつながります。

医師と同じ基準で、毎日判断する

この発熱の翌日、主治医から輸液を週2〜3回のペースで継続する方針が示されました。さらにその後、「1日の水分摂取量が200mL以下の日が2日続いた場合に点滴を行う」という具体的な基準が示されています。

以後、看護師は毎日の飲水量をこの基準に照らして、点滴の要否を判断しました。実際に、飲水量が基準を下回った日には当日中に点滴を実施し、十分に摂れている日には行わないという運用を続けています。

医師と施設が同じ基準を共有し、その日のうちに判断する。この積み重ねが、入院を経ずに療養を続けることを可能にしました。

お看取りまでの時間を、ご家族と

終盤、B氏は口から食事を摂ることが難しくなりました。看護師は食事提供の中止についてご家族にご相談し、あわせて次のことをお伝えしました。

  • お看取りの時期が近づいていること
  • 面会時間に制限はないこと
  • 夜間に状態が変わればすぐにご連絡すること

その4日後、血圧の低下を認めた時点でご家族にご連絡しました。ご長女とご次女が来られ、以後は居室に泊まって付き添われました。椅子とリクライニング車椅子をお使いいただき、枕と掛け布団をお渡ししています。

血圧測定については「測っても行える処置がないのであれば」とご家族が希望され、測定を控える形をとりました。気になるときはいつでも測定することもお伝えしています。

最期の朝、ご長女が見守るなかでB氏は静かに息を引き取られました。主治医に来ていただき、死亡確認となりました。

この事例からお伝えしたいこと

1. 点滴が必要でも、お受けできます

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は看護職員を配置しており、点滴の管理、褥瘡(床ずれ)の処置、内服管理などに対応できます。「点滴が続くから施設は無理」と言われた方も、まずご相談ください。

2. ご家族が決めた方針を、そのまま引き継ぎます

病院の退院支援の段階でご家族が決められた方針は、施設が変わっても変わりません。当施設では、点滴・栄養方法・救命処置のそれぞれについて、どこまでを望まれるかを文書で受け取り、職員全員で共有します。

3. 面会や付き添いに制限は設けていません

お看取りが近づいた時期の面会時間に制限はありません。居室での付き添い、宿泊にも対応しています。

医療機関のご担当者様へ

継続的な補液が必要な方、経管栄養を選択されない方、DNARの方針が定まっている方について、当施設はお受けできる体制を整えております。

ご紹介にあたっては、点滴・栄養方法・急変時対応のそれぞれについて、ご本人・ご家族の意向を具体的にご記載いただけますと幸いです。「延命治療は行わない」という記載だけでは現場の判断材料として不足する場面があります。本事例では、条件が具体的に明記されていたことが、方針を変更せずに継続できた最大の要因でした。

空床状況や受け入れ可否については、お電話にてお問い合わせください。

医療依存度の高い方の受け入れについて

よくあるご質問

点滴が必要な状態でも入居できますか。看護職員が配置されているため、末梢静脈からの補液の管理に対応しています。訪問診療の医師の指示のもとで実施しますので、まずはご相談ください。
胃ろうや鼻からの管を使わない方針でも受け入れてもらえますか。ご本人・ご家族が選択された方針を尊重します。経管栄養を行わない方針の方もお受けしています。
急変時に救命処置を望まない方針でも大丈夫ですか。主治医とご家族の間で方針が定まっている場合、その内容を文書で共有いただいたうえでお受けしています。
お看取りが近いとき、家族は泊まれますか。面会時間に制限は設けておらず、居室での付き添い・ご宿泊にも対応しています。

本記事について

本記事は、当施設における一事例の記録に基づく報告です。記載内容は個々の利用者様の状態や経過を保証するものではありません。氏名・生年月日・住所その他の個人が特定される情報はすべて削除し、ご家族の同意を得たうえで公開しています。共通の倫理方針は研究・実践報告に記載しています。

発行:有限会社たいよう 看多機たいよう堺東
最終更新:2026年9月2日